肘関節屈筋群における電気刺激トレーニングの効果
電気刺激トレーニング(electrostimulation:以下ES)は、対象筋群の筋活動量および筋トルクを増大させる効果があるものとして知られている。しかし、ESが拮抗筋群にどのような影響を与えるかについてはよく調べられていない。
ここでは8名の男子学生を対象に肘関節屈筋群へのESを週3回ずつ7週間にわたり行った。肘関節を90度に固定した状態で、最大随意運動時の60%の強度で3分間の刺激を一日5回行った。トレーニング期間の前後にアイソメトリック・コンセントリック・エキセントリックの3様式の運動時における上腕二頭筋および上腕三頭筋の、筋トルクおよび筋活動量を測定し、トレーニング効果を検証した。
トレーニングの結果、アイソメトリック屈曲運動時の筋トルクは33〜48%増加、コンセントリック時は11〜19%、エキセントリック時は6〜11%とそれぞれ増加した。一方、アイソメトリック伸展時は25〜39%減少した。また、アイソメトリック屈曲運動時の上腕二頭筋の筋活動量が有意に増加したのに対して、上腕三頭筋は若干低下の傾向を示した。ESにより、対象筋への神経支配が増加した一方で拮抗筋側は減少するという神経系の適応が起こったと考えられる。
一般にヒトの骨格筋は意識しやすい部位とそうでないところがある。個人差はあるが、一般的に上肢の場合は、いわゆる力こぶの筋肉(上腕二頭筋)は意識しやすいが、三頭筋側は意識しにくく、下肢の場合は、いわゆる前腿の筋肉(大腿四頭筋)は意識しやすいが、ハムストリング(大腿二頭筋)は意識しにくいとされている。そのため通常のトレーニングではどうしても意識しやすい側の筋肉を使用する比重が高くなるという傾向があり、筋バランスの不均衡をもたらしてしまうことがある。筋バランスの向上を目的として、意識しにくい筋群に対してESを行う、というアイデアが思い浮かぶが、これについて、さらなる研究が行われ具体的な方法論が確立されることを期待したい。
Re-Examination of Training Effects by Electrostimulation in the Human
Elbow Musculoskeletal System. S. Colson et al. Int. J. Sports Med. 2000;
21:281-288